ICT × 数学 × 教育

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教育のICT化について考えるブログです。特に数学の授業におけるICT教育について発信します!

主体的・対話的で深い学びを実現できる授業とは?高校数学での「教えて考えさせる授業」の実践録③

前回,実際に高校の数学の授業でどのように実践して取り入れたか,教師の説明・理解確認・理解深化・自己評価の4つの段階ごとに具体的にご紹介しました。

ict-math-edu.hatenablog.jp

 

今回は,理解確認においてペア活動を円滑に行うためにどのような環境づくりを行なっているか,実際の取り組みをご紹介したいと思います。

 

 

ペア活動の時間では,「説明し合う」ことを主に行っています。

相手に「説明する」ことで自分自身がどこがわかっておらずどこまで理解できているかを把握することが目的です。

理解したことを自分の言葉で説明できることは、その内容が身についたか理解できているかを確認できる簡単な方法だと思っています。

 

しかし、「さあ説明し合いましょう」と言っても初めから生徒同士で説明はでません。

相手とある程度の人間関係ができていないと活動そのものに支障をきたします。

そこで説明し合うペア活動を円滑に行うために、学級全体で話しやすい環境づくりを行っています。

特に4月の1回目の授業では力を入れて、これらの大切さを伝えた上で次のようなアイスブレイクを行っています。

 

教師「ペアとなる相手に、名前と、趣味を30秒ほどで伝えましょう。見本ではこんな感じですね。(一呼吸)『峰太郎です。ミネッチと呼ばれてます。趣味はこう見えて料理が得意なことです。唐揚げやローストビーフなどをよく作ります。毎回作りすぎるので太りました。』」どうです?できそうですか?まず15秒ほど差し上げますので、相手にどんな内容を伝えるか考えてみてください。では15秒どうぞ。

 

(15秒はおおざっぱに計測。生徒の顔を見てだいたい終わりの時間を決める)

 

では、時間になりました。ペアとなった廊下側の人、手をあげてください。次に窓側の人、手をあげてください。(ここでペアが全員わかっているか、廊下側や窓側という表現をして自分自身のことだとわかっているかを確認。)いいですね。では、廊下側の人から名前、趣味を30秒で伝えます。どうぞ。

 

(ここでも30秒はおおざっぱに計測。生徒の様子を見て切り上げる。)

 

では交代です。次は窓側の人が名前と趣味を30秒で伝えましょう。どうぞ。

 

(同じく30秒おおざっぱに計測し、生徒の様子を見て切り上げる。)

 

相手に伝えられましたか?相手にうまく伝えられない、コミュニケーションが苦手という人もいると思います。苦手と感じている人はどれぐらいいますか?苦手と感じていてもこれから練習をしていけばいいので、何も問題ありません。では一つ、聞く側の練習をしてみましょう。今度は、聞く側の人は相手が話している最中にうなづいて相槌をうってください。テーマは入りたい部活とその動機を伝えてみましょう。例えばこんな感じです。」

 

ここで一人二役で、入りたい部活と相槌の打ち方のデモストレーションをします。

その後、先ほどと同様にお互いに説明し合うペア活動をします。

 

教師「どうでしたか?1回目より聞いてもらっていると感じませんでしたか?さらにもうひとつ練習してみましょう。今度も聞く側の人は相槌をうつのですが、その時に『うんうん』『そうなんですか』『面白そうですね』『素敵ですね』など笑顔で相手の考えに肯定な相槌を返してみてください。相手の考えに肯定な相槌ということが大事です。テーマは春休みにどんなことをして過ごしたか相手に伝えてみましょう。家でのんびり過ごしたことや、ゲームをしたでももちろんかまいません。何も伝えることが思い浮かばないという人は、こんな春休みを過ごしたかったという内容を実際にあったかのように相手にバレないように伝えてみましょう。例えばこんな感じです。」

 

ここで本当に過ごした休暇なのかわからない絶妙な例を一人二役で演じてデモストレーションをすると盛り上がります。

その後、先ほどと同様にお互いに説明し合うペア活動をします。

この時に、お茶目な子、目立ちたい子、あまり目立ちたくない子など生徒たちを観察します。

これを実践してきて、ほとんどの学級で盛り上がっていました。

全体で「相手の春休みの過ごし方が、これはすごいと思った人はいますか?」と聞くことでペアの仲の良さやクラスの反応も伺えます。

それを発表してもらい、教師が笑いながら反応することで何を発表しても大丈夫というやわらかい空気が生まれているように思います。

最後に次のように締めています。

 

教師「今ペア活動を3回してもらいました。はじめはふつうに、次は相槌をうって、最後は相手の考えに肯定する相槌をしました。どうでしょうか?話し手の立場だったときに、一番話していて気持ちよかったのは何回目ですか?たぶん一番最後で相手から肯定の相槌があったときではないでしょうか?聞いてもらえていると感じますよね。今後、この授業では自分の言葉で説明する時間を作ります。その時はペア活動で行います。ぜひ、まずは聞く側の技術を身につけて、お互い気持ちよく説明できるようにしてみましょう。説明に不安を感じている人も多いと思いますが、その都度どのようなことを意識したらよいか伝えていくので安心してくださいね。」

 

ここでのペア活動のテーマでは、趣味、入りたい部活、春休みにどのようなことをして過ごしたかなどをあげましたが、他にも数学の苦手なところを紹介しあったり、学校の行事と絡めた内容をしたりしています。

学期のはじめや席替えの後などに行うと効果的です。

 

説明し合うことの大切さを伝えつつできるアイスブレイクとして重宝しています。

「説明する」ことにも様々な技術がありますが、それよりも聞く技術の方が習得しやすいです。

コミュニケーションが苦手と感じている生徒が多いので、少しでも自分でもできるということを実感して、説明し合う活動に抵抗をなくそうと取り入れています。

 

今回はペア活動を円滑に行うための環境づくりとして、聞き手の練習をするアイスブレイクをお伝えしました。

次回は、理解確認のペア活動をより活性化するために大切な「発問の仕方」と「説明する技術」についてお伝えできればと思います。