ICT × 数学 × 教育

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教育のICT化について考えるブログです。特に数学の授業におけるICT教育について発信します!

主体的・対話的で深い学びを実現できる授業とは?高校数学での「教えて考えさせる授業」実践録①

 

 

はじめに

私は常々,生徒がより主体的に学びに向かうためにはどうしたらいいか,高校数学で対話的な授業とは難しいのではないかと感じていました。

といいますのも,今まで私自身が受けてきた授業や授業見学をさせていただいた数学の授業では,多くは「教師が問題を解説し,その後類似問題を生徒が解く」といった解説と演習型の授業を行なっていました。

数学部会や研究授業などで紹介される「探求型の授業」では,生徒に知識を与えずヒントだけで本日の重要ポイント(公式や証明など)を自力で見つけさせるといったものが多く,発見できた生徒は面白いと感じると思いましたが,数学が苦手な生徒にとってはただただ苦痛の時間に思いました。

すばらしいと思ったものでもすぐに真似ができるようなものではなく,その単元の一発もののことが多く,普段の自分の授業に活かせるものは少なく感じました。

 

日々の授業に少しでも活かせる実践録はないかと探しても,高校ではあまりシェアする文化が少ないのか数が圧倒的に少なく感じました。

ここで私は,

  • 数学の授業で対話的な授業は本当に難しいのか
  • 深い学びを実現するための手法としての「探求型の授業」で数学が苦手な生徒でもスキルアップできる方法とはないか
  • 生徒が主体的に学びに向かうためにはどうしたらいいか

ということを意識しながら授業計画を立てるようになりました。

 

様々な失敗を繰り返してきましたが,「教えて考えさせる授業」との出会いが(少し大げさかもしれませんが)私の授業に革命をもたらしました。

これらの3つの悩みを全てクリアでき,さらにICTを活用した授業との相性もよかったのです。

 

教えて考えさせる授業とは

「教えて考えさせる授業」は「わかる授業」「子どもが充実感を感じられる授業」を目指して市川伸一先生(東京大学大学院教育学研究科・教授)が提唱されたものです。

生徒に教えるだけではなく,また生徒に教えずに考えさせるわけでもなく、生徒に知識を与え,生徒が「教えられて,理解し,さらにその先を考えていく」というステップをとった授業の手法です。

「学習の過程とは,与えられた情報を理解して取り入れることと,それをもとに自ら推論したり発見したりしていくことの両方からなること」という認知心理学での基本をこの授業での基盤としています。

言われてみれば当たり前なことと思いますが,実際の授業でこのような学習の過程を生徒に経験させることができていたかと言われると正直自身がありません。

 

教えて考えさせる授業では4つの段階を大切にしており,授業の流れは,はじめに教師が知識を教え,教え合いの活動などを通して生徒は理解確認を行いこの日習う知識を習得します。その習得した知識を用いて理解を深めるような課題を行い,授業の最後に自己評価を行うという手順が基本的な構成です。

 

教えて考えさせる授業の流れ

① 教師の説明

教材・教具・説明の工夫を行いながら教師から説明を多ないます。教科書を活用したり,モデルによる実演を行う,代表生徒との対話を行うことで対話的な説明を行うなど,生徒全員が今回の授業でおさえておきたい知識を教えます。教師の腕のみせどころです。

 

② 理解確認

授業で身に付けたい内容を生徒自身が理解の確認を行う時間です。生徒自身が説明し合ったり,教え合いの活動を取り入れたり,類題を解くなどの方法があります。

 

③ 理解深化

授業で習ったことを使って,より理解を深める問題にチャレンジします。例えば誤りそうな問題を用意してその間違いを発見させる課題や,習った法則などを拡張することによって解ける応用・発展的課題,生徒による問題づくりなど様々です。授業計画を立てる上で一番楽しいところです。

 

④ 自己評価

生徒自身が授業を通して「わかったこと」「わからないこと」を整理して,理解状態の表現を行ういます。

 

教えて考えさせる授業はこの4段階を意識して行います。

実際に教材研究を行い授業計画を立てる時は,今回の授業で確実に生徒に身につけさせたいことは何か,どのように教えると定着がはかれるか,より深い理解を得られるようにどのような理解深化課題を用意するとよいかといったことに明確に意識するようになり,授業計画を立てやすくなりました。

 

まとめ

主体的・対話的で深い学びを実現できる授業の手法の一つとして「教えて考えさせる授業」を紹介しました。

高校の数学で実際に実践してみたところ,様々な失敗もありましたが生徒からの授業に対する反応は格段によくなり,特に数学が苦手な生徒が一生懸命に授業に取り組む様子が見られるようになりました。

ただはじめから完璧にうまくいったわけではありません。

それぞれ4つの段階で様々な工夫を行いました。

今後,高校数学で実践した内容,それぞれ4つの段階での工夫内容などをお伝えできればと思います。

 

参考文献

・市川伸一,“「教えて考えさせる授業」を創る 基礎基本の定着・深化・活用を促す「習得型」の授業設計”,図書文化,2008

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・“教えて考えさせる授業 解説ページ”,(http://www.p.u-tokyo.ac.jp/lab/ichikawa/ok-kaisetu.html

 

・市川伸一,“授業からの学校改革「教えて考えさせる授業」による主体的・対話的で深い習得

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